あったかブログ

2016/09/18 更新

あったか連載:神戸市交通基本条例制定を

公共交通神戸電鉄粟生線/沿線住民の足を守る会 松本勝雄

 

神戸市でも高齢化の進展とともに、公共交通問題への市民の関心が高まり、要求も切実になっています。神戸市は、「神戸市総合交通計画」を二〇一三年に策定し、これに基づき交通問題に取り組んでいるとしていますが、切実な市民の要求に応えるには神戸市交通基本条例をつくり抜本的な交通政策の転換をすることが必要となっています。

①交通政策の基本を全市民の移動を支えることに置く必要がある。
二〇一三年制定の「交通政策基本法」で、人の移動や物の輸送にかかわる国民の諸活動の基礎である交通の基本が決められましたが、国民の「交通権」の制定は不十分なものとなりました。
一方、全国の多くの自治体で「市民の移動する権利を尊重」(熊本市)など交通基本条例をつくって市民の交通の要求に応えようとする取り組みが増えています。神戸市でも交通政策の基本の第一にすべての市民の移動を支えることを交通基本条例で明確にすることを求めなければなりません。

②市民の移動を支えるにあたって、神戸市や交通事業者、企業・事業者等の責務を明確にする必要があります。
神戸市はこれまで「公共交通を」という要求に「採算が成り立つ需要が前提」「運行するかどうかは交通事業者が判断」「住民の主体的取り組みが必要」(日本共産党市議団予算要望への回答)と、神戸市の責任を明確にすることをしませんでした。
公共交通の責任を事業者任せや、住民の主体的取り組みにゆだねる態度を改め、住民にとって生活に欠かせない公共交通は、神戸市が責任を持つことを明確にするよう転換をする、そのことを交通基本条例で明確に定める必要があります。

③交通問題に取り組む上で、人と環境にやさしい交通を優先することを明確にすることも求めなければなりません。
高齢化社会になっても住み続けられるように、また、地球温暖化への対応としても、人と環境にやさしい交通優先を明確にすることは重要です。

④高齢者や障害者を始め、すべての市民が公共交通を利用しやすくするために、運賃の改革・低廉化は大事です。
京都府京丹後市は六つのまちが合併してでき、神戸市と変わらない五百平方キロの広大な市域になりましたが、市内の公共交通は「上限二百円」としています。神戸市でも、ぜひこのような公共交通の低廉化を工夫をすべきです。

⑤公共交通の充実を進めるうえで市民の理解と参加が特別に重要です。
高度成長期は、便利で早く安全で運賃も手ごろ、このような公共交通を走らせれば利用者が集まり運行できていました。
ところが現在、公共交通の危機はこれでは解決できなくなっています。
利用者・市民が、ドアツードアの便利なマイカー使用を抑えて公共交通を利用するライフスタイルの転換を自発的に行うことが必要になっており、住吉台くるくるバスでも、沿線住民がわがバスを守る気持ちも込めて利用しているとのことです。
しかし、今の神戸市政では「住民・市民参加」がたいへん形骸化しています。反対意見への対応も根本から変えるべきです。
LRTによる公共交通の改革を成功させている自治体では、市長が先頭にたって徹底して反対意見を聞き、場合によってはその意見も取り入れながら公共交通の改革を進めています。
また、公共交通とまちづくりを「交通まちづくり」と位置づけてすすめている自治体のなかには、行政が交通問題に関心のある市民、住民運動している市民とともに新しい交通まちづくりに取り組むことを実践している自治体も現れています。
神戸市でも住吉台くるくるバスなどの先進的取り組みも生まれており、粟生線の再生に関わっている市民や、障害者のバリアフリーに取り組んでいる市民など、幅広い市民の意見を取り入れるやり方にするべきです。これこそ公共交通の改革を進めるキーポイントであると思います。

⑥公共交通はまちづくりの土台と定めとりくむ。
長野県木曽町(木曽福島町などが合併してできた町)では、「公共交通は医療や福祉、教育、観光、商工業を支える土台」「公共交通は命と国土を守る」と位置付けています。神戸市でも交通基本条例を制定して、市民の公共交通の要求にこたえ、市民の移動を支える市政を実現しようではありませんか。

⑦公営交通を大事にする。
神戸市は、市電の走っていた時代から、バスや地下鉄などの公営交通が市民から愛され、神戸市や、事業者、交通労働者が市民とともに公営交通を育ててきました。市民の公共交通をつくりあげるうえで公営交通の果たす役割をしっかりと位置づけて取り組む市政を取り戻そうではありませんか。

(2016年9月18日付「兵庫民報」掲載)