あったかブログ

2016/05/15 更新

神戸の地域経済を考える(あったか連載)

自営業者の減少をどう考えるか?

 

兵庫県中小商工業研究所所長 近藤義晴

ドイツで、全般的な景況が悪くないのに、自営業者数の減少が続いている。

この事象はかなり前から想定され、連邦政府も起業・独立開業の促進施策を講じてきた。確かに開業数は増えている。しかし、開業よりも廃業(年金生活入りを含む)の方が多いのである。

減少の基本的要因は、少子高齢化である。自営業者の事業を継承する者の数が絶対的に不足している。

その上、若い世代の高学歴化が進み、多くの者(業者の子を含む)が従来からある分野に従事しないか、雇用者であることを選択する。独立して営業できる資格を取得したマイスターでも、独立の義務はなく、雇用者として習得した職業能力を活いかすことはできる。若者の職業生活意識の変化や社会保障制度の違いも減少要因となる。

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日本でも、自営業者の減少ないし後継者不足という事象は起きている。

二〇一四年調査の経済センサスの結果を二〇〇九年と比較してみると、個人経営の事業所および従業者の数は減少している。特に小規模事業所の減少が大きい。小規模な会社事業所が増加している点と対照的である。この事象は全国的傾向である。

神戸市では、個人経営の総事業所に占める割合は五年間で四一%から三九%へ、さらに従業者五人以下事業所のうち個人経営の割合は五六%から五二%へとより大きく減少している。従業者の面では、個人経営の総従業者数は一割以上減少し、全従業者比は一三・一%から一一・九%へ減り、少数派化が進んでいる。

しかし、この減少具合を区や業種別にみると、異なった姿が現れる。個人経営の多い長田区では事業所の減少が二割近くになる(中央区は五%以下の減少)。飲食料品小売、婦人・子供服小売、菓子・パン小売、飲食店、さらに洗濯業や理容業などでは、従来からの小さな家族経営的店が減少している。

しかし、例えば専門料理店業では、「創作ダイニング」と謳うたった店のような、新たな需要に応える個人経営の小規模事業所は増加している。

個人経営・自営業者の動向は、単に景況の悪化のみならず、人口動態や需要・購買行動の変化、さらに価値観の変化などの長期的構造要因にも由来する。当事者も、実態の具体的把握に基づき、行政要求とともに、変化に適応して需要者に受容されるような主体的取り組みが必要である。

(神戸市外国語大学名誉教授)
(2016年5月15日付「兵庫民報」掲載)