あったかブログ

2016/06/05 更新

公立幼稚園の存続を(あったか連載)

存続求め地域に広がった署名

 

日本共産党神戸市議 林まさひと

「神戸市教育委員会が市立幼稚園の九カ所が閉園を決定」―昨年六月、新聞報道で表面化しました。この突然の決定は、幼稚園に子どもを通わせている保護者はまったく知らされていませんでした。

教育委員会は、幼稚園を希望する園児が減少する中で、私立を含めた幼稚園の供給が過剰などとして、その調整に公立幼稚園を削減。その手始めに、東灘・須磨・垂水の三区で二カ所ずつ、中央・北・西の三区で一カ所ずつの合計九カ所の廃園を計画しました。

神戸市の幼稚園廃園に反対するお母さん方や自治会などは、廃園の中止や延期を求める署名を集め、短期間で二万筆の賛同が集まりました。

私も西区の木津幼稚園のお母さん方といっしょに署名を集めました。

九月に開かれた神戸市議会には、東灘区からは九つの地区協議会(自治会)の区長連名の「閉園中止を求める陳情」、北区や西区などからは幼稚園の保護者会代表の「園の存続」「閉園の撤回または延期」を求める陳情が提出されました。

議会で陳情は採択されず審査打ち切りになったものの、教育委員会は、九園のうち三園の閉園時期を一年遅らせるよう計画を変更しました。それでも、保護者や地域の反対の声は収まらず、署名に協力する市民も広がりました。

運動が広がることを恐れた久元喜造市長は、今年二月の予算議会に、九つの幼稚園を二〇一七(平成二十九)年度から二〇二〇(平成三十二)年度にかけてそれぞれ閉園する計画を盛り込んだ条例案を議会に提出しました(これまでは、個々の幼稚園が閉園する年度末に条例化していました)。

二月の予算議会には、八人の方が見直し・存続を求めて陳述されました。幼稚園児の現役のお母さん、以前に子どもを預けていたお母さん、また、神戸市立幼稚園連合会の会長を先頭にしたすべての園連名の陳情が出されました。陳情のどれもが感動的なものでした。

*
陳情者の陳述は、運動を通しての保護者の認識の深まりを感じさせました。神戸市の「神戸創生戦略」の人口目標(四十五年間で十四歳以下の人口を五%しか減らさない)と廃園の事業計画との矛盾や、全国の公立廃園の流れに対して市立幼稚園存続の意義を指摘したことは、的を射たものでした。 同時に、地域にとっての公立幼稚園の存続の意味の深さが、さまざまに語られ、公立幼稚園の廃園が、その地域の自治を壊し、地域のもっている力を弱めてしまうことが浮きぼりになったと思います。

  • 「住吉町住民の財産、町民の思いがつまった園庭」
  • 「福祉・教育における施設は『地域の核になれ』と言われますが木津幼稚園はまさに地域の核」
  • 「幼稚園がなくなれば、地域のつながりを途絶えさせる。市立幼稚園は送迎が当たり前なので、その事を通してPTAなどの活動もさかん。なくしてしまったら元に戻せない」
  • 「野山、自然に囲まれた環境で子どもたちは心も体も鍛えられ、インフルエンザの発症も一人だけだった」
  • 「この幼稚園で自然を学び、その後、森林学を学び、林野庁へ。今後は発展途上国に。幼稚園の経験が生かされています」

―陳情者からは、有形無形の効能が、本当に豊かに出されました。

*
神戸市立幼稚園PTA連合会の陳情書にはこう書かれています。

「保護者と先生と地域で子どもを育てる―公立幼稚園を認定こども園に移行した政令指定都市もあれば、公立幼稚園ゼロの政令指定都市もあります。その中で神戸市は全国トップクラスの公立幼稚園を誇ります。他府県・他地方よりも公立幼稚園が根付いているといえます」 

「公立幼稚園の最大の特長は『全てを巻き込んだ教育』だと思います。園児と先生のみで教育が進むのではなく、保護者と地域、そして自然が大きく関わっています。保護者は毎日の送迎や親子行事などで子どもと積極的に関わり、親子の結びつきを強めます。地域は、行事ごとに近隣の方が参加し、絆を育みます。そして、自然は、四季折々の行事やふとした遊びの中で子どもたちにその多様性や温かさ、時に厳しさを教えてくれます。これだけの教育環境はどこでも揃えるというものではありません」 

「長年培ってきた幼児教育のノウハウを途切れさせることなく、より多くの子どもがそれを受けられる機会を積極的に作っていくべきだと考えます」

*
この道理ある主張にたいして、教育委員会は真正面から回答することができませんでした。日本共産党神戸市議団は議会で、神戸市が閉園計画を修正したことがさらに矛盾を深めていると神戸市の矛盾を突く論陣を張り、陳情の採択を求めました。しかし、自民、公明、民主こうべ、維新・民主、志民党などの賛成多数で、幼稚園廃園の条例は可決されました。

*
条例は施行されましたが、「私たちはあきらめません」(陳情者)の思いに応えるため、地域の願いにこたえる形で幼稚園を存続させられるよう、引き続き頑張りたいと思います。

(2016年6月5日付「兵庫民報」掲載)